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投稿日:2024年1月30日 | 更新日:2024年01月30日
弁理士に興味のある方向けに、弁理士とはどのような資格であるか、どのような業務をしているか、試験の概要、勉強時間と対策はどのようなものなのかを説明しています。
特に、試験勉強の詳細については、筆者が実際に行っていたことも含めて説明しています。
※この記事は2023年9月現在の情報となっております。
弁理士とはどのような国家資格か
弁理士とは、知的財産権の専門家(プロ)に与えられる国家資格です。
知的財産権とは、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、不正競争防止法における商品表示・商品形態など、知的創造活動の成果に対する、一定期間の独占権を指します。
弁理士の特徴としては、産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)に関わるすべての手続を代理人として代理することが認められていることが挙げられます。
例えば、特許では、出願した後3年以内に審査請求をしないと、出願が取り下げられるという制度がありますが、産業財産権になじみがないと、「審査請求をこの期間内にしなかった」ということも起こり得ます。
このように、産業財産権の取得(登録)には、複雑な手続を正確に行う必要があるため、弁理士には本人に代わって物事を処理する代理が認められています。
さらに、弁理士は知的財産権の専門家であるため、知的財産権をどのようにしてビジネスに役立てるのか、などのコンサルティング(相談)業務も行っています。
勤務先の仕事内容と平均年収
弁理士の勤務先としては、大きく分けると、特許事務所と会社の知財部に分かれます。
特許事務所の主な仕事内容
クライアントである会社の依頼に基づいて、特許権や商標権などの産業財産権を取得(登録)することです。
知財部の主な仕事内容
企業の開発した製品から、産業財産権で保護するポイントを抽出し、このポイントを産業財産権として保護することができるようにすることです。
産業財産権を取得すると、企業の開発した新しい技術やデザインなどに独占権が生まれるよ。ほかの企業など、第三者に技術を盗まれたりすることを防ぐとともに、産業の発展を促すことも考えて作られた制度が、「産業財産権」なんだ。
特許事務所、会社の知財部どちらも、日本以外の仕事(外国の仕事)が多いため、仕事で英語を使う機会も多いという特徴があります。
弁理士の平均年収
弁理士の平均年収は700~750万円とされています。中でも、特許事務所を独立・開業している弁理士の方の年収は1000万円を超える場合も多いです。
弁理士になるには
弁理士になるルートは3つあります。
- 弁理士試験に合格する
- 弁護士となる資格を有する
- 特許庁において、審査官又は審判官として、審判又は審査の事務に7年以上従事する
多くの弁理士は、弁理士試験に合格するルートで、弁理士となっています。また、いずれのルートも、弁理士登録をする前に、実務修習という研修を受講する必要があります。
弁理士試験の概要・日程
弁理士試験は、1年に1回行われます。受験料は12,000円です。また、受験資格は特にないため、学生であったり、最終学歴が高校卒であっても、受験することができます。
弁理士試験の概要 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)
試験は、短答式試験(1次試験)、論文式試験(2次試験)、口述試験(3次試験)の3つがあります。司法試験における予備試験のような試験はありません。また、論文式試験には、必須科目と選択科目があります。
弁理士試験段階 | 試験日程 | 試験形式 | 試験内容 |
1次試験:短答式試験 | 5月中旬~5月下旬 | マークシート形式 | ・特許法・実用新案法(20問) ・意匠法(10問) ・商標法(10問) ・条約(10問) ・著作権法・不正競争防止法(10問) 合計:60問 試験時間:3時間30分 |
2次試験:論文式試験(必須科目) | 6月下旬~7月上旬 | 論文式 答案用紙に記述して解答。 | ・特許法・実用新案法(2問) 120分 ・意匠法(1問) 90分 ・商標法(1問) 90分 |
2次試験:論文式試験(選択科目) | 7月下旬~8月上旬 | 論文式 答案用紙に記述して解答 | 理工系、法律系などの科目の中から1科目を選択 試験時間一律90分 |
3次試験:口述試験 | 10月中旬~10月下旬 | 面接方式 | 試験委員の質問に対して口頭で回答する試験 特許法・実用新案法、意匠法、商標法 それぞれ10分程度 |
合格発表は例年10月下旬~11月上旬頃です。
短答試験と論文試験(必須)は、合格すると翌年以降の2年間は、合格した試験について免除されます。さらに、論文試験(選択)は、合格すると、その後は試験が免除されます。
また、弁理士試験(令和4年)の受験生は3177人であり、合格者数は191人でした。また、合格者のうち、最年少の合格者は20歳、最年長の合格者は61歳でした。合格率については、最近では6%前後で推移しています。
弁理士試験の合格者データ – 弁理士試験対策講座|資格の予備校ならLEC東京リーガルマインド (lec-jp.com)
弁理士試験合格までの勉強時間と難易度
弁理士試験に合格するための学習時間は約3,000時間と言われています。ただし、この学習時間はあくまでも目安であり、2,000時間程で合格する方もいれば、5,000時間以上かかって合格する方もいます。また、弁理士試験の難易度は、社労士や税理士よりも難しく、公認会計士よりもやや優しい、といえます。
弁理士試験の難易度は高い?合格率や勉強時間・偏差値ランキングまで徹底解説! | 資格Times (shikakutimes.jp)
この学習時間ですが、月曜日から金曜日は1日3時間、土曜日と日曜日で合計15時間勉強することで、週30時間勉強し、このサイクルを2年続けることで、3,000時間に到達する、というのが、2年で合格するための目安になります。また、1回受験で合格する一発合格者もいますが、一発合格者の場合、受験勉強を開始する前の段階である程度知識がある、あるいは、より多くの学習時間を確保している、などの事情があることが多いです。
その一方で、仕事や家庭の都合で、平日に1日3時間勉強するのは難しい、という方もいるかと思われます。そのような方でも、平日に1日2時間、土日は合計で10時間勉強することで、週20時間の学習時間を確保することが重要です。4,5年の勉強期間で合格している方の場合、このようなスケジュールで試験勉強をしていることが多いです。
また、学習時間の確保に際しては、通勤・通学時間を有効に活用している方が多いです。電車の移動中に条文集やテキストを読む方は多いと思いますが、その他にも、歩きながら、受験機関の講座を聞いたり、吹き込んだ条文を聞いたりしている方もいます。
時間が取れない人こそ、短時間に効率良く学習を進めなければ、合格率6%という非常に高い壁を突破することは厳しいでしょう。
忙しくて勉強時間が取れない人におすすめの通信講座を紹介するよ。
忙しい人におすすめの通信講座
論文試験の選択科目と選択免除について
弁理士試験の論文試験では、必須科目の他に選択科目があります。しかし、論文試験を受験する方のうち、選択科目を受験する方は約2割にすぎません。したがって、論文試験を受験する方の約8割は、選択科目を免除されています。
選択科目を免除される方法としては、概ね以下の3つの方法があります。
- 修士・博士
- 所定の資格を有している
- 前年度以前に選択科目の試験に合格する
選択免除が認められている主な資格としては、技術士、薬剤師、電気通信主任技術者、行政書士、情報処理技術者があります。既にこれらの資格を有している場合には、選択科目の免除を申請することが可能です。また、選択免除を取得するために、新たに資格を取得する場合には、合格までの勉強時間が少ない資格(例えば、応用情報技術者試験など)を受験する、という方もいます。
また、選択科目の試験は、1回合格すれば、翌年以降の選択科目の試験は免除されます。
選択科目を受験する場合には、以下の5つの中から、試験分野を選択します。
- 機械・応用力学(理工Ⅰ)
- 数学・物理(理工Ⅱ)
- 化学(理工Ⅲ)
- 生物(理工Ⅳ)
- 情報(理工Ⅴ)
- 法律(弁理士の業務に関する法律)
機械・応用力学では、材料工学、流体力学、熱力学、土質工学の中から1科目を選択します。
数学・物理では、基礎物理学、電磁気学、回路理論から1科目を選択します。
化学では、物理化学、有機化学、無機化学の中から1科目を選択します。
生物では、生物学一般、生物化学の中から1科目を選択します。
情報では、情報理論、計算機工学の中から1科目を選択します。
法律の試験範囲は、民法の総則、物権、債権です。
弁理士試験の勉強方法(入門講座)
弁理士試験に合格するためには、合格点を取るのに必要な勉強をすると共に、点数に結び付く可能性の低い勉強をしないことが重要になります。また、弁理士試験の勉強内容や勉強方法は、学力に応じて異なる点があります。
弁理士試験を始めた段階では、予備校の入門講座を受講することが一般的です。予備校のテキストは、試験範囲の法律・条約を、体系的に、わかりやすく説明してくれています。そして、入門講座の進み具合に合わせて勉強することで、弁理士試験までの勉強スケジュールも自動的に組まれるようにできています。したがって、入門講座の講座やテキストを繰り返し復習することで、知識を定着させる、ということが入門講座の一般的な勉強となります。
弁理士試験対策の予備校としては、これらの予備校がおすすめだよ。
各予備校の詳細については下のパートにある、「予備校の使い方」、「おすすめの通学講座」、「おすすめの通信講座」でも説明しているからぜひ参考にしてね。
- LEC東京リーガルマインド
- アガルート
- スタディング
なお、費用等の観点から、独学での試験勉強を考える方もいますが、弁理士試験については、合格が難しくなるというデメリットがあるため、これらの予備校を使うことをお勧めします、その理由として、独学では、試験に合格するために必要な事項を取捨選択することが困難であるからです。
勉強方法(短答試験)
ここでは、短答試験の勉強方法について説明します。
短答試験の合格基準は60問中39問正答することです。ただし、特許・実用新案法、意匠法、商標法、条約、著作権・不正競争防止法のいずれか1つの科目で、4割未満であった場合には不合格となります。たとえほかの科目が満点でも、正答率が4割未満の科目があると不合格に。そのため、苦手な科目を作らないことが必須となります。
短答試験対策としては、この合格基準点プラスαの点数を取ることを目標として、勉強することが一般的です。予備校では、特許・実用新案法、意匠法、商標法(これらを四法ともいいます)では8割正答し、条約と著作権法・不正競争防止法で6割正答することで、合計44点を取る、ということも言われています。その理由としては、四法は、論文試験や口述試験でも問われるため、短答試験の勉強が、論文試験や口述試験につながることが挙げられます。
短答試験対策としては、過去問を解きながら、解説を読むことで、条文や制度の理解を深めるという方法がよく行われています。過去問については、何回か繰り返し解くことで、試験に聞かれやすい事項とそうでない事項とが見えてくる、というメリットがあります。
ただし、過去問を繰り返し解く際に注意する事項として、以下の2つがあります。
- 正解を導き出すことができ、かつその理由付けも正しい問題は、次回以降解かない。
- 正答率の低い問題(正答率30%未満)は解かない。
短答試験は、満点を取る必要のない試験です。60問のうち数問は難易度の高い、いわゆる「捨て問」があります。この捨て問を回答するための努力をするよりは、ある程度の正答率のある問題を繰り返し説いたほうが、より合格に近づきます。
また、過去問の解説で条文、青本、審査基準、判例などが書かれていた場合には、これらの資料も読んで理解を深めるようにしましょう。
勉強方法(論文試験)
ここでは、論文試験(必須科目)の勉強方法について説明します。論文試験(必須科目)の合格基準は、特許庁にて以下のように示されています。
「標準偏差による調整後の各科目の得点の平均(配点比率を勘案して計算)が、54 点を基準として口述試験を適正に行う視点から工業所有権審議会が相当と認めた得点以上であること。ただし、47点未満の得点の科目が一つもないこと。」
分かりにくい説明となっていますが、最近の傾向を見ると、論文試験受験者の約25%が論文試験に合格しています。
弁理士試験の合格者データ – 弁理士試験対策講座|資格の予備校ならLEC東京リーガルマインド (lec-jp.com)
論文試験対策としては、短答試験と同様、苦手な分野を作らない、四法のどこを聞かれても無難な回答をすることができる、ということが重要になります。具体的には、四法でどのような問題が出ても、論文試験の受験者の中で半分より上位の点数を取ることができるという点が重要になります。
短答試験とは違い、論文試験では他の受験者との得点を比較してボーダーラインが決まるみたいだね。47点未満の科目が1つでもあると不合格になってしまうため、苦手な分野を作らないことも大切だよ。
特許法・実用新案法は、120分で2問となっています。特許・実用新案法では、事例問題が非常に多く、でかなりの長文問題になることもあります。そのため、条文の理解に加えて、事例問題における事案整理をより早くするための訓練も必要になります。
一方で、意匠法や商標法は、90分で1問となっています。意匠法や商標法では、制度趣旨を聞かれることが多いため、青本に記載されている制度趣旨を回答できるか否か、という点も重要になります。従って、制度趣旨を回答する場合には、キーワードとなる単語について、正確に暗記して再現できることが重要になります。
特許・実用新案法、意匠法、商標法のいずれも、勉強の内容としては、試験と同じように全文を書き、その後復習する方法や、論文で書く項目だけを上げて、項目の抜けをチェックする方法があります。また、復習の段階では、必要に応じて、条文や青本、審査基準を読みこんだり、趣旨のキーワードを覚える等のインプットも重要になります。
勉強方法(口述試験)
ここでは、口述試験の勉強方法について説明します。口述試験は、特許・実用新案法、意匠法、商標法の3つの法域のうち、不合格の判定が2個以上あると不合格になります。口述試験の合格率は、概ね9割以上であるため、短答や論文に比べると簡単なように見えますが、短答・論文試験に合格していても合格できないことがあるため、油断はできません。
口述試験の勉強方法としては、過去問集を解いて解説を読む方法や、試験官役と受験生役に分かれて、模擬試験をするという方法があります。口述試験は、知識が頭に定着していないと答えられないため、特に条文や趣旨の暗記が重要になる試験です。
予備校の使い方
予備校の講座や答練では、弁理士試験の日程から逆算してスケジュールが組まれています。そのため、これらの講座や答練は、ペースメーカーとしての役割を果たすというメリットがあります。
入門講座は、先ほど紹介した6つの予備校のいずれにも用意されています。入門講座は、半年から1年弱かけて受講するものが多いため、先生や予備校との相性も重要になります。そのため、予備校によっては、体験での無料講座も用意されています。
また、短答答練や、論文答練では、答練の際の時間配分を体感することができる、という利点があります。例えば、短答答練の場合、最初の30問を90分で回答し、10分休憩して、残りの30問を回答する、残りの20分で見直しをする、というペース配分を試すことも可能です。また、論文答練で、一日に四法全部を解く答練(模試)では、特許・実用新案法と意匠法との間の休み時間の過ごし方、意匠法と商標法の間の休み時間の使い方、等についても体感することができます。
おすすめの通学講座
先ほど紹介した予備校のうち、通学講座を行っている予備校は、LECなどです。これらの予備校で講座を担当している先生は、いずれも経験豊富な先生であり、多数の合格者を輩出しています。そのため「先生を選ぶ」という点については、実際に講義を聞いてみて、自分に合いそうかという観点で決めることをお勧めします。
また、様々なオプションや、講義を聞き洩らした際のフォローなどについては、大手の予備校のほうが充実しています。したがって、この点にLECは充実していると言えます。
ちなみに、筆者も弁理士試験の受験生時代は、様々な通学講座を受講しました。私の場合は、勤務地に近いLECで宮口先生が講義をしていたため、宮口先生の講座を受講していました。
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おすすめの通信講座
通信講座については、先ほど紹介した6つの受験機関全てが行っています。アガルート、スタディング、資格スクエアでは、先生はほぼ固定されているため、先生との相性の良し悪しは、予備校の選択により大きく影響します。また、予備校は、LECのような大手予備校よりも低額で講座を受講することができるというメリットがあります。
筆者が使った通信講座は、代々木塾の堤先生の講座です。論文対策で、答案構成の講座を受講していました。ただし、現在は、この講座は実施されていないようです。
皆さんも自身に合ったスクールや先生を見つけ、弁理士のキャリアをスタートさせてみませんか?
それぞれ講座の特長や料金が異なるほか、先生との相性もあるから、一度無料のお試し講座を受けてみることもおすすめだよ。
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